■栗の歴史 縄文時代から江戸時代まで
栗は縄文時代の遺跡から沢山発見されていることからも、日本人にとっては馴染みの深い種実だったといえます。
◎栗は今から1万4千年前の縄文時代には主食でした。
野生の芝栗は縄文時代から食用にされていました。
縄文時代の後期に栗は栽培されるようになり、保存食として貴重な食料の一つだったのです。
この時代の原生種は芝グリという品種で、現在流通している品種と比べると、甘みが薄く、サイズも小ぶりだったようです。
◎武士の時代に栗は縁起物に昇格、江戸時代でも栗は身近な食材でした。
蒸した栗を日に当てて乾燥させたものを「かち栗」といいます。
栄養価が高くうまく保存すれば100年でも保存できる食品として、昔から重宝されていた栗ですが、
戦の時には非常食として常備されていました。
「かち→勝ち」という言葉のイメージで、栗を戦の前などに縁起をかついで食べるようになりました。
江戸時代になると、旧暦9月9日の重陽の節句には「菊酒」を飲んで「栗ご飯」を食べる習慣が庶民にも広がり、この時代から既に栗は菓子の材料になるなど、昔から広く親しまれてきた食材です。
■栗の旬・産地
栗の旬は秋ですが、9月頃から出回り始め11月頃まで購入できます。
日本での産地は、茨城県、熊本県、愛媛県が主です。
年々収穫量が減っているので、いずれ国内産の栗は貴重になるかもしれません。
■栗の種類・品種後との特徴
世界中に多くの品種が存在しております。大きく分けると、日本栗、ヨーロッパ栗、アメリカ栗、中国栗の4つに分類されます。
◎筑波(つくば)
日本で最も広く栽培されている品種で、岸根(がんね)と芳養玉(はやたま)の交雑種です。
甘みが有り香が強いのが特徴です。
収穫時期:9月中旬~10月中旬頃
◎丹沢(たんざわ)
乙宗(おとむね)と、大正早生(たいしょうわせ)交雑種です。
甘みと香りは少なく、サイズは比較的大きめです。筑波の次に多く作られている品種です。
収穫時期:8月中旬~9月下旬頃
◎銀寄(ぎんよせ)
サイズは大きく、扁平な形をしています。粉質で甘味がと風味が強いのが特徴です。筑波、丹沢の次に多く作られている品種で、「丹波栗」としても流通しています。
収穫時期:9月中旬~11月上旬
【銀寄栗】
◎ポロタン
「森早生」+「改良豊玉」+「国見」交雑種に、更に「丹沢」を掛け合わせた品種です。天津甘栗に使われている中国栗と同じように、加熱することで渋皮がポロッと簡単に剥けるという特徴があります。
収穫時期:9月中旬~9月下旬(食べ頃:10月中旬~11月下旬)
■栗に含まれる栄養素・効能
栗がナッツ類というのはご存じでしょうか。栗の主要成分は炭水化物です。でんぷんを多く含み、タンパク質も多く、縄文時代に主食とされていた理由が解る気がします。エネルギー源となる他、食物繊維も多く含まれているため、腸内環境を整え、便秘の改善にも期待できます。
イガイガの部分が皮、剥いて捨ててしまう部分が実、食べている部分が種です。
◎捨ててしまいがちな渋皮部分にはタンニンが豊富
外側の硬い皮を鬼皮といい、可食部分にひっついてとりにくい薄い皮を渋皮といいます。剥くのに苦労する渋皮部分にはタンニンが含まれています。
タンニンはポリフェノールの一種で、抗酸化作用によるガン予防、動脈硬化予防、老化防止などの効果が期待できます。タンニンを無駄にしないように渋皮煮などで積極的に食べることをお勧めします。
栗に多く含まれるビタミン類ではビタミンの王様、ビタミンCが目立ちます。コラーゲンの生成を助け、肌の健康を維持し、効酸化作用や効ストレス、免疫力を上げる働きが期待できます。
◎栗に多く含まれるビタミン類
その他にも、タンパク質の合成や、エネルギー代謝に必要なビタミンB群も多く含まれており、疲労回復ビタミンことビタミンB1、皮膚の健康を維持する『発育のビタミン』のビタミンB2、女性ホルモンを調整し月経前症候群(イライラ、頭痛、腰痛)を軽減したり、妊娠中のつわりの改善の効果のあるビタミンB6など、豊富な種類のビタミンが含まれています。
抗酸化作用による、動脈硬化予防、抗ガン作用にあるビタミンA(βカロテン)も若干含まれています。
◎栗に多く含まれるミネラル類
ミネラル類では骨を丈夫にするカルシウムや、余計なナトリウム(塩分)の排出を促して、高血圧予防に期待できるカリウムが豊富です。
貧血予防の効果のある鉄分、骨の成分になるマグネシウムも若干含まれています。
◎栗の可食部100gに含まれる栄養素 食材としての効能・効果
栗はタンパク質、脂質、食物繊維が多く、ビタミン、ミネラル類の種類も多く栄養価の高い食材です。
栄養素(栗の可食部100g当) | 栄養素量 |
エネルギー | 164kcal |
タンパク質 | 4.2g |
脂質 | 0.5g |
炭水化物 | 36.9g |
食物繊維 | 4.2g |
ビタミンB1 | 0.21mg |
ビタミンB2 | 0.07mg |
ビタミンB6 | 0.27mg |
ビタミンC | 33mg |
カリウム | 420mg |
鉄分 | 0.8mg |
カルシウム | 23mg |
◎栗の効果と働き。まとめ
栗の主な働きと効果:効酸化作用によるガン予防・老化防止、皮膚の健康維持、骨の健康維持、疲労回復、体内ナトリウム(塩分)排出による高血圧予防、便秘改善・予防、免疫力の向上など。
■栗のお勧めの調理方法 効果を引き出し、栄養素を効率よく摂取するためのポイント
栗に含まれる豊富な水溶性のビタミンCは、でんぷんに包み込まれているため、加熱しても水に溶け出しにくく、効率よく吸収できます。
ビタミンCと同じく、抗酸化作用を持つビタミンA(βカロテン)、ビタミンEと一緒に摂取すると、相乗効果でより強い効果が期待できますビタミンAは緑黄色野菜に多く含まれ、ビタミンEは油、モロヘイヤ、カボチャ、菜の花などに多く含まれています。同じ料理に入れるのは難しくても違う料理で摂取することも出来ますので、栄養素の相性でメニューを決めるのも面白いかもしれません。
カルシウムの吸収を助けるビタミンDは、残念ながら栗には含まれていません。ビタミンDはきのこ類に多く含まれているため、栗と一緒に炊き込みご飯にすると、効率よくカルシウムが摂取できます。
■おいしい栗の選び方
まずは表面にツヤがあり、硬く張りのある栗を選びます。
そして虫食いの穴や傷がついていないかを確認してください。
小さな穴や傷から虫が入り込んでいることがあるからです。
また、持った時に軽いものは水分が抜けている可能性があるので除けてください。
■栗の皮のむき方と保存方法
◎栗の鬼皮(硬い皮)の綺麗な剥き方
たっぷりと水を入れた鍋を火にかけて、沸騰したら火を止めます。
お湯の中に栗を入れて30分ほど熱湯に浸けます。
皮が柔らかくなったら、丸みのあるお尻に、渋皮を傷つけないようにして浅く切り口を入ます。
切り口から側面に沿って皮を剥くと鬼皮だけが綺麗に剥けます。
◎栗の渋皮(薄い皮)の綺麗な剥き方
- 鍋に栗をいれ水をかぶるまで入れ塩を一つまみ入れ沸騰させます。
- 渋皮が白っぽくなったら鍋の湯を捨ててから冷水を入れて触れるくらいに熱が取れるまで冷まします。(※このとき冷やしすぎると逆に剥きにくくなります)
- 皮がふやけてきたら、ブラシかスポンジの裏(硬い部分)で擦って渋皮をとります。
- 最後に爪楊枝などで溝に残った渋皮を掻き出してやると完成です。
◎栗の保存方法
生の栗は乾燥しやすいため、ポリ袋などに入れて冷蔵庫で保存してください。
常温で保存する場合は、新聞紙にくるみ、直射日光が当たらない涼しい場所で保存して1週間以内に食べるようにしてください。
少し手間を加えると1ヶ月ほど長持ちします。鍋や大き目のタッパーなどに水と栗(生、皮付き)を入れ、水に対して1~2%の塩を加えて一晩(半日)寝かします。水分をしっかりと切ってから新聞紙にくるんで、ポリ袋に入れます。ポリ袋に爪楊枝などで、通気用の穴を数箇所開けてから冷蔵庫で保管します。