■ゴボウの雑学・歴史
ゴボウは漢字で書くと:牛蒡
英語では:Edible Burdockになります。
キク科の多年草で、根の部分を食用とする根菜で淡色野菜です。
ヨーロッパ、アジアの熱帯地域が原産池で古くから中国では薬として用いられてきました。
日本での歴史も古く、千ウン百年前に中国から薬的な存在として伝わりました。
食用になったのは平安時代で、ゴボウを野菜として扱うのは日本人だけのようです。
太平洋戦争(第2次世界大戦)のおり、捕虜になった連合国の兵士が終戦後、ゴボウを食べさせたことを誤解して「木の根を食べさせられた」と軍事裁判で訴え、捕虜収容所の警備員が捕虜虐待の罪により死刑となりました………というのは結構有名な話です。当時ゴボウは結構貴重なもので、日本人でもゴボウはなかなか口に出来ないような状況でした。日本人にとってゴボウは身近な野菜ですが、外国人にとっては得体の知れない植物の根っこに見えたようです。貴重なゴボウを与えたつもりが、食文化の違いから虐待と受け取られるという悲しいお話です。

フランスでは頭の皮膚病に効く草と言われており、漢方などの東洋医学においても薬として扱われているようです。
漢方では、人間の下半身は植物の根の部分に相似(そうじ:よく似ているという意味)する………と考えられており、この様な考え方を相似の理論と呼びます。
ゴボウを含め、人参・タマネギ・蓮根・山芋などの根菜を食べると、足腰・膝・排泄器官・生殖機能などのトラブルに効果があると考えられてきました。
様々な異なる特徴(性質)があり、様々な効果を持つ根菜を一括りにするのはどうかと思いますが、ゴボウには整腸作用や利尿作用があるため、この部分はあながち間違いとは言えません。
不溶性の食物繊維が豊富で、しなりがありるためゴボウでひっぱたかれるととても痛いです。


ゴボウの旬:4月~6月・11月~2月(春・冬)
■ゴボウに含まれる栄養素、働きと効果
◎ゴボウに含まれる栄養素、働きと効果その1・ゴボウに含まれるビタミン類
ゴボウは淡色野菜です。
緑黄色野菜はビタミン類が多く、ミネラル類が少ない………逆に、淡色野菜はビタミン類が少なく、ミネラル類が多い………といったヤンワリとした法則があるのですが、ゴボウもこの法則に則ってビタミン類が少なく、ミネラル類が多いといった特徴を持っています。
ゴボウに含まれるビタミン類を見てみると、ビタミンEと葉酸の2種が多く含まれています。
ビタミンEは強力な抗酸化作用を持っており、細胞の老化を防ぎ・ガン予防・動脈硬化予防などのアンチエイジング効果があります。
その他にも、毛細血管を拡張させる作用により血流を改善して肩こりや冷え性の改善に働きます。
造血ビタミンの葉酸は造血作用をサポートする働きや、核酸(DNA・RNA)の合成に関わり、細胞の新生には欠かせない栄養素です。
この働きは胎児の成長にも欠かせないもので、妊娠時には体内での利用量が増えるため妊娠中・授乳中には一日の推奨量も増加します。
その他のビタミンは、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、パントテン酸、ビオチン、ナイアシンなどのビタミンB群も少~しだけ含まれており、ビタミンCもチョロッと含まれています。

◎ゴボウに含まれる栄養素、働きと効果その2・ゴボウに含まれるミネラル類
寂しいビタミン事情に比べると、ゴボウに含まれるミネラルは種類も量も豊富で賑やかなものです。
ゴボウにはカリウム、マグネシウム、鉄分、亜鉛、銅などが多く含まれています。
カリウムは余分なナトリウムを排出させて、高血圧を予防・改善する働きと、細胞内の水分量・PH(酸性・アルカリ性のバランス)・浸透圧(細胞内に物質が入り込まないようにする)などの調節を行い、細胞内の環境を正常に維持する働きがあります。
▼ゴボウに含まれるミネラルの連携による貧血対策と抗酸化作用
鉄分と銅が多いということは、ゴボウは鉄欠乏性貧血の予防・改善に効果的な野菜ということになります。
鉄分はヘモグロビンの材料として、銅はヘモグロビンを合成する働きを持つ酵素の材料として、貧血対策には効果的な働きをする栄養素です。
亜鉛と銅は高い抗酸化作用を持つSOD(スーパーオキシドジスムターゼ)の構成成分となります。
また、亜鉛は男性ホルモンや女性ホルモンなどの合成に関わる他、味覚細胞の形成にも関わっており、生殖機能の維持、味覚の維持、免疫機能・神経系の正常維持、脳機能の活性化など様々な作用がある栄養素です。
▼ゴボウはカルシウムよりもマグネシウムが多い野菜です。
マグネシウムはカルシウム・リンと共に骨の材料となり、骨や歯を丈夫にする働きや、カルシウムと協力して筋肉を収縮させる働きや、様々な働きをする数多くの酵素に関わりエネルギー生産などをサポートする働きなどがあります。
カルシウムも入っていますが、少し物足りない含有量です。ゴボウからでは十分な量を摂取することは出来ません。
一方、毎度カルシウムの影に隠れがちなマグネシウムは、カルシウムよりも多く含まれているため、カルシウムとマグネシウムの摂取バランスを整えるためには最適………とまでは言えませんが、少しだけ貢献してくれる食品となります。
カルシウムとマグネシウムの摂取比率は2(かる):1(まぐ)が理想です。
この比率が崩れてしまうと、双方の吸収率が下がってしまったり、排出量が増えてしまったり、良いことはありません。
カルシウムのことだけを考えて、牛乳からカルシウム補給をする場合、両者の比率は10(かる):1(まぐ)となるため、骨太効果を牛乳だけに頼ると、どうしてもマグネシウムが不足してしまいます。
それを知らない愚民共は、マグネシウムを無視してカルシウムを意識して摂ろうとする傾向が強いため、このバランスが崩れるのは健康的ではありません。
バランスが崩れた状態が長く続くと、慢性的なマグネシウム不足に陥ります。
不整脈や、虚血性心疾患というような、よく解らない何となく怖そうな病気が発症するリスクが高くなります。

他にも、骨や歯が脆くなったり、筋肉痛や腓返り(こむらがえり:ふくらはぎの筋肉がピクピク痙攣して痛むこと………と辞書に書いてありました)などの問題が起こります。
愚民共の仲間入りにをしたくない場合は、意図的にバランスを考えてマグネシウムを摂取することが大切です。
ゴボウの場合は、
1(かる):1.173913043478261(まぐ)の比率になり、理想の数字には届きません。
少しだけですがミネラルバランスの調整に役に立つ野菜です。
食材 | カルシウム比率 | マグネシウム比率 |
里芋 | 1 | 2 |
じゃがいも | 1 | 7 |
蕎麦 | 1 | 10(※1) |
小豆 | 1 | 1.6 |
納豆 | 1 | 1.11 |
(※1)挽き方(蕎麦粉の種類)によって比率は異なります。でも大体はこの数値です。
◎ゴボウに含まれる栄養素、働きと効果その3・三大栄養素+食物繊維事情
カロリーは穀物程高くはありませんが、野菜の中では2~3倍程高く(なんとなくそんなイメージ)、里芋以上、ジャガイモ未満といった具合です。
主成分は炭水化物で、糖質も食物繊維もどちらも多く含まれています。
ゴボウはカロリーが高めのため、太りやすい食品の様に見えますが、肥満防止の役立つ食物繊維が多く、ゴボウといえば食物繊維と断言できるくらい、水溶性も不溶性もどちらもてんこ盛りです。
野菜の中ではゴボウに勝てる物を探すのが難しいくらいです。

まず、水溶性食物繊維ですが、利尿作用を持つイヌリンが豊富に含まれています。
水分を含むことで粘性を持ち、消化を遅らせて血糖値の上昇を抑える働きや、老廃物やコレステロールを吸着して排出させる働きがあります。
ナトリウムの吸収を阻害して排出する作用があり、カリウムと合わせて高血圧の予防・改善にも効果的です。
また、ビフィズス菌、乳酸菌の餌となり、腸内の善玉菌を増やして腸内環境を整える働きもあります。
不溶性食物繊維は、セルロース、ヘミセルロース、リグニンなどが多く含まれており、腸内の発ガン性物質の排出を促すことで、滞在時間を縮めて大腸ガン発生のリスクを下げる働きがあります。
特にリグニンは大腸ガンの予防に高い効果を発揮すると言われています。
腸のぜん動運動を促して、便通をよくして便器の改善に働き、老廃物や余分な脂質、コレステロールなどの排出を助けるため、整腸効果が期待できます。

不溶性・水溶性のどちらの食物繊維も多く含むゴボウには、かなり高い整腸効果があるといえます。
ゴボウに含まれるタンパク質は特別多いという訳ではありませんが、大事な働きをするアミノ酸が含まれています。

ゴボウには非必須アミノ酸の一種で、アルギニンが含まれており、
免疫力を高める働きや、筋肉を強化して体脂肪の燃焼を促す働きの他に、成長ホルモンを合成する働きがあり、子供の成長には欠かせない栄養素です。
ゴボウは江戸時代の前から滋養強壮の薬として用いられてきました。
これも、性ホルモンの分泌を促して精子の数を増やす働きをするアルギニンによるものです。
ゴボウには妊娠をサポートする栄養素が多く含まれており、妊娠前と妊娠後の両方で効果を発揮する野菜です。
アルギニンの作用と、男性ホルモン・女性ホルモンを生成する亜鉛、妊娠中に多く利用される葉酸の働きと合わせて、栄養素の連携が見られます。
ゴボウに含まれる脂質は少なく、情報をまとめると………高糖質で、低脂質で、並タンパク質で、食物繊維てんこ盛りの、決して太りやすい訳では無いけど高カロリー食品という事になります。
◎ゴボウに含まれる栄養素、働きと効果その4・ポリフェノール、渋味も栄養素
ゴボウには、プリフェノールの一種で渋み成分のタンニンが含まれており、便を固めて、下痢を改善する効果や、殺菌作用などがあります。
ゴボウの他にも柿や緑茶、赤ワインなどにも含まれています。
消炎作用、収斂(しゅうれん:傷口や血管などを引き締める)作用、火傷や皮膚病にも効果があるとされていますが、こちらの作用は食べるのでは無く、薬草として利用した場合の話です。

タンニンの他にもクロロゲン酸というポリフェノールが含まれており、タンニンの一種でコーヒーにも含まれる褐色成分でゴボウ色の一端を担っています。
苦味成分でもあり、抗ガン作用があるのではないか………と考えられていますがまだまだ研究段階のようです。
ポリフェノール類は全て抗酸化作用を持っているため、ビタミンE・亜鉛・銅などの栄養素との相乗効果が期待できます。
◎ゴボウに含まれる栄養素、働きと効果・まとめ
ゴボウの主な働きと効果:抗酸化作用、下痢の改善、便秘の改善、整腸作用、腸内環境改善、殺菌作用、生殖機能維持、妊娠サポート、核酸(DNA・RNA)の合成サポート、悪性貧血の予防・改善、高血圧の予防・改善、骨の健康維持、免疫力向上、血糖値の上昇抑制、血中コレステロール値を下げる、胎児・子供の成長サポート、
◎ゴボウ可食部100g辺りに含まれる栄養素一覧
栄養素 | 含有量 |
---|---|
エネルギー(kcal) | 65 |
タンパク質(g) | 1.8 |
脂質(g) | 0.1 |
飽和脂肪酸(g) | 0.02 |
一価不飽和脂肪酸(g) | 0.02 |
多価不飽和脂肪酸(g) | 0.04 |
コレステロール(mg) |
0 |
糖質(g) | 9.7 |
水溶性食物繊維(g) | 2.3 |
不溶性食物繊維(g) | 3.4 |
ナトリウム(mg) | 18 |
カリウム(mg) | 320 |
カルシウム(mg) | 46 |
マグネシウム(mg) | 54 |
リン(mg) | 62 |
鉄分(mg) | 0.7 |
亜鉛(mg) | 0.8 |
銅(mg) | 0.21 |
マンガン(mg) | 0.18 |
ヨウ素(μg) | 2 |
セレン(μg) | 1 |
クロム(μg) | 1 |
モリブデン(μg) | 1 |
ビタミンA レチノール活性当量(μg) |
微量 |
βカロテン当量(μg) | 1 |
ビタミンD(μg) | 0 |
ビタミンE(mg) | 0.6 |
ビタミンK(μg) | 微量 |
ビタミンB1(mg) | 0.05 |
ビタミンB2(mg) | 0.04 |
ナイアシン(mg) | 0.4 |
ビタミンB6(mg) | 0.10 |
ビタミンB12(μg) | 0 |
葉酸(μg) | 68 |
パントテン酸(mg) | 0.23 |
ビオチン(μg) | 1.3 |
ビタミンC(mg) | 3 |
ゴボウ一本=160~180g
■NEXTページ続きます。

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