■さやいんげんの雑学・歴史
今回はインゲン豆の記事じゃなくて、野菜の方の莢インゲンです。
莢インゲンとは、未成熟な状態のインゲン豆を莢(さや)ごと収穫して、莢ごと美味しく食べる緑黄色野菜です。

インゲン豆は中南米が原産地で、1654年(江戸時代四代将軍:家綱の頃)に隠元隆琦(いんげんりゅうき)という僧によって、中国から伝わりました。

一方この頃、三代目将軍家光が死んで、後を継いだ4代目将軍家綱は、先代の政策(圧力重視のパワハラ・武力政治)を止めて、法律重視の文治政治に切り替えました。歴史的なキーポイントになる時代です。
先代の圧政により、改易(お家の取潰し)で浪人(失業者)が溢れ、幕府や国全体の財政の悪化や(家光の散財も影響)、治安の悪化により、幕府を倒そうとするクーデター未遂事件が起こりました。これを切っ掛けに法改正をして、国民や諸大名への締め付けを緩めた新しい時代が始まります………。
ちなみに、隠元隆琦は家綱と謁見したことがあるそうです。「将軍がなんか変な帽子かぶってた」って言ってました。(本人に確認取りました)


その僧の名前をとって、インゲン豆も莢インゲンも漢字で書くと:隠元となります。(さやいんげんは:莢隠元)
英語で書くと:KidneyBeans
年に数回収穫が可能なため、別名:三度豆とも呼ばれています。
国内の産地は千葉県、鹿児島県、福島県などです。
旬の時期は6月~9月にかけて、夏の野菜です。
■莢インゲンに含まれる栄養素、働きと効果
◎莢インゲンに含まれる栄養素、働きと効果その1・莢インゲンに含まれるビタミン類
莢インゲンに含まれるビタミン類の中では、ビタミンA(βカロテン)、ビタミンB2、ビタミンK、葉酸の4種類が特に多く含まれています
まず、ビタミンA(βカロテン)ですが、莢インゲンは緑黄色野菜の基準である「可食部100g辺りに含まれるβカロテンの含有量600μg以上」には、僅かに一歩届いておりません。

しかし、他の栄養素も豊富に含まれていることと、総合的な栄養素の摂取のしやすさを考慮されて、例外的に緑黄色野菜に認定されています。
アスパラ、トマト、青ピーマンもβカロテンの含有量は600μg未満ですが、莢インゲンと同じ理由により、緑黄色野菜としてカウントされています。
ビタミンAは視力を保ち、夜盲症の予防と改善に働く目のビタミンです。
他にも、皮膚や粘膜を正常に保つことで免疫力を上げて、感染症を予防する働きがあります。
また、体内でビタミンAとして働くβカロテンには、ガン予防や動脈硬化を予防する抗酸化作用があります。
莢インゲンのビタミンによる抗酸化作用事情は、ビタミンA単体によるもので、同じ抗酸化作用を持つビタミンCと、ビタミンEはあまり多く含まれていないため、相乗効果は期待できません。

ビタミンA,ビタミンC、ビタミンEの抗酸化作用はそれぞれ別ルートで働く為、合わせて摂ると抗酸化作用パワーが増し増しになります。
莢インゲンに含まれているビタミン類の中では、ダントツに多いのがマイナービタミンのビタミンKです。
止血のビタミンとも呼ばれ、血液凝固に必要なタンパク質を造り出す酵素の補酵素として働く他、カルシウムを骨へと沈着させて骨を形成する働きのサポートをする骨太要素のある栄養素です。

ビタミンB群では、ビタミンB2と葉酸が多く含まれており、ビタミンB2は脂質のエネルギー代謝や、タンパク質を合成して爪、髪、皮膚などの細胞の再生(新陳代謝)する働きをサポートして、人類の敵である口内炎を防ぐ働きがあります。
造血のビタミンこと葉酸は、赤血球を合成する働きをサポートして、鉄分を摂っても改善しない悪性貧血(巨赤芽球性貧血)の予防・改善に働く他、
核酸(DNAやRNA)を合成して、細胞分裂や、肉体の新陳代謝をサポートするといった、胎児の成長には欠かせない妊婦さんにとっては重要な栄養素です。
◎莢インゲンに含まれる栄養素、働きと効果その2・莢インゲンに含まれるミネラル類
莢インゲンには、鉄分、モリブデンが多く含まれています。
この2つのミネラルは鉄欠乏性貧血の予防と改善に効果的に働きます。
まず、鉄分はヘモグロビンの材料となり、モリブデンは、肝臓などに貯蔵されている貯蔵鉄を血液中に放流して機能鉄に変えることで、鉄分からヘモグロビンを造り出すための環境を整えます。
モリブデンが不足することはあまりありませんが、どちらの栄養素も不足すると鉄欠乏性貧血に繋がります。
貧血対策になるミネラル類は鉄分、モリブデンと、銅の3つですが、莢インゲンにはこの内の2つが含まれています。
ビタミンでは葉酸も多く含まれているため、貧血対策としては、ビタミンB12と銅が抜けていますが、完璧とは言えずとも有効な野菜だと言えます。
莢インゲンには、マンガンも多く含まれています。
抗酸化作用、骨の代謝、ホルモンの合成、血糖値を下げるインスリンの合成など、様々な働きをする酵素の材料となるマンガンは、解説するのがメンドクサイ程色々と各方面で働いています。

骨の成分となり、筋肉を動かすために必要なカルシウムとマグネシウムは………決して多くは無いのだけれど、まあまあの量が含まれているといった感じです。
カリウムも多く含まれており、余分なナトリウムのを排出して高血圧の予防・改善に働く他、細胞内の水分調節をしてむくみの解消にも働きます。
◎莢インゲンに含まれる栄養素、働きと効果その3・三大栄養素と食物繊維
莢インゲンは、高タンパク質、低脂質、並糖質、並食物繊維の低カロリー緑黄色野菜です。
莢インゲンの主成分はタンパク質です。
このあたありは、莢的要素(野菜的要素)よりも、豆的要素が強く現われています。
逆に脂質は少なく、この辺りは莢的要素(野菜的要素)が強く現われています。

莢インゲンのタンパク質事情は、(キャベツ・小松菜・人参・ネギ・白菜)以上、(アスパラガス・ほうれん草・カボチャ・大根)未満といったポジションです。
ブロッコリーやタケノコには及ばないまでも、野菜の中ではかなり多い数値です。

マッチョ指数の高い莢インゲンには、アミノ酸も豊富に含まれています。
旨味成分として調味料などで幅広く利用されるグルタミン酸が多く含まれており、脳や神経の働きを助け、ボケ防止の効果があり、疲労回復にも働きます。
他にも、ブドウ糖のエネルギー代謝の促進や、組織の修復、抗体の材料にもなるリジンも多く含まれており、エネルギー代謝を促進して疲労回復・スタミナ増強効果のあるアスパラギン酸は、アスパラガスよりも多く含まれているくらいです。序に利尿作用もあります。
ビタミンB2の疲労回復効果と、組織の再生効果と、アミノ酸の作用は非常に良い組み合わせになります。
莢インゲンに含まれる糖類ですが、デンプンが多く、
糖アルコールのマンニトールも含まれていますが、正直これはどーでもいい話です。
マンニトールは、マルトース(麦芽糖)から作られ、消化されにくく、エネルギーにもなりにくい低カロリー甘味料なのですが、莢インゲンのカロリーは気にする程のものでも無いため、入っていてもいなくても正直どーでもいい話です。

莢インゲンは不溶性の食物繊維が多く、水溶性の食物繊維はあまり多く含まれておりません。不溶性食物繊維は、コレステロールや脂質の吸収を妨げ、脂質異常症などの生活習慣病を予防する働きがあります。
◎莢インゲンに含まれる栄養素、働きと効果・まとめ
莢インゲンの主な働きと効果:三大エネルギーの屋医者、夜盲症の予防・改善、目の健康維持、疲労回復、爪、髪、皮膚などの新陳代謝、鉄欠乏性貧血の予防・改善、核酸(DNAやRNA)の合成、悪性貧血の予防・改善、止血作用、骨の形成サポート、利尿作用、ボケ防止など
◎莢インゲン可食部100g辺りに含まれる栄養素一覧
栄養素 | 含有量 |
---|---|
エネルギー(kcal) | 23 |
タンパク質(g) | 1.8 |
脂質(g) | 0.1 |
飽和脂肪酸(g) | 0.02 |
一価不飽和脂肪酸(g) | 微量 |
多価不飽和脂肪酸(g) | 0.05 |
コレステロール(mg) | 微量 |
糖質(g) | 3.0 |
水溶性食物繊維(g) | 0.3 |
不溶性食物繊維(g) | 2.1 |
ナトリウム(mg)1 | 1 |
カリウム(mg) | 260 |
カルシウム(mg) | 48 |
マグネシウム(mg) | 23 |
リン(mg) | 41 |
鉄分(mg) | 0.7 |
亜鉛(mg) | 0.3 |
銅(mg) | 0.06 |
マンガン(mg) | 0.33 |
ヨウ素(μg) | 0 |
セレン(μg) | 微量 |
クロム(μg) | 1 |
モリブデン(μg) | 34 |
ビタミンA レチノール活性当量(μg) |
49 |
βカロテン当量(μg) | 590 |
ビタミンD(μg) | 0 |
ビタミンE(mg) | 0.2 |
ビタミンK(μg) | 60 |
ビタミンB1(mg) | 0.06 |
ビタミンB2(mg) | 0.11 |
ナイアシン(mg) | 0.6 |
ビタミンB6(mg) | 0.07 |
ビタミンB12(μg) | 0 |
葉酸(μg) | 50 |
パントテン酸(mg) | 0.17 |
ビオチン(μg) | 3.9 |
ビタミンC(mg) | 8 |
一本=約5g(小型品種)~10g(大型品種)

■NEXTページ→に続きます。

- 1
- 2