■クロムとは
クロムとは16種の必須ミネラルの一種で、微量ミネラルに属する栄養素です。
結論から申し上げますと、クロムは意識しないでも自然に摂取されるような栄養素です。欠乏症も過剰症も特に心配は無く、大事な働きをする栄養素なのですが、体内での必要量も低く「栄養素を積極的に摂取しましょう」という文句はクロムには当てはまりません。
この記事はクロムの視線から糖質や脂質の代謝についてを解説しています。
クロムに関しては、知らなくても、意識しなくても問題になるようなことはありませんが、栄養素の働きを知ること、意識することで、健康に近づくことは間違いないと考えています。特に健康との関わりが強い、糖質と脂質についての情報ですので、頭の隅っこにでも置いておくことをお勧めします。

クロムの種類としては、3価クロム、4価クロム、6価クロムなどがあります。自然界では、動植物、土壌、岩石なに含まれます。自然界にあるクロムの殆どが3価クロムの状態で存在しています。栄養素となるのも3価クロムです。
一方、人工的に作られた6価クロムは耐食性が強い………のかどうか知りませんが、アクセサリーなどの金属のメッキ加工に使用されます。クロームメッキとクロムメッキは同じもの………らしいです。



栄養素として機能する3価クロムは毒性が低く、工業分野で使用される6価クロムは毒性が強いという特徴があります。3価クロムと6価クロムを同時に摂取した場合、毒性の強い6価クロムの方が吸収率が高いという事がわかっています。4価クロムは発がん性があるとされ、こちらも毒性が強い物質です。
毒性が強いニコチンは、酸素に比べると吸収率(体内に取り込むメカニズム)が強い………というのを昔TVでやっていたこを思い出しました。花粉などのアレルギー性物質もくっつきやすい性質があるとか無いとか………。

ミネラルの歴史は浅く、他のミネラルと同様で、まだまだ研究段階の栄養素です。
■クロムの働きと役割
◎クロムの働きと役割その1・インスリンの働きを強化、血糖値を下げて糖尿病を予防します。
血糖値………血液中に含まれる糖(グルコース)の濃度の事ですが、慢性的に血糖値が高い状態が続くと、糖尿病のリスクが高まります。糖尿病は様々な合併症が起こる怖い病気です。クロムは血糖値を下げるサポートをしており、間接的にですが、糖尿病を予防する効果があります。
まず、クロムはクロモデュリンという物質の材料となっています。初めて目にする方も多いかと思いますが、このクロモデュリンという物質………何者かと言いますと、インスリンの作用を強化する働きがあります

食後に吸収された糖質は血液によって全身に運ばれる訳ですが、この時血液中の糖質の濃度………血糖値が上がります。血糖値が上がると脾臓からインスリンというホルモンが分泌され、血液中の糖質を筋肉や脂肪などの各細胞へと取り込むように促します。クロモデュリンがインスリンの働きを強化するため、血液中の糖質を細胞へと取り込む働きが活発となり、その結果、血糖値が下がります。
インスリンが上手く作用すれば糖質がエネルギーへと変換されるため、血糖値が下がり、糖尿病の心配は少なくなりますが、逆にインスリンの作用が鈍いと糖質の代謝が鈍ってしまい、血糖値が下がらず糖尿病になる可能性が高くなります。
クロムが間接的にインスリンを活性化させることにより、糖尿病のリスクを軽減しているのです。
インスリンの詳細についてはこちら→糖質の記事(炭水化物)で解説しています。
ここで注意したいのは、クロムは不足する事が殆ど無い栄養素だということです。クロムのサプリを飲んでインスリンの働きが改善したという報告もありますが、クロムのサプリを飲んでいれば糖尿病にならないという訳ではありませんのでご注意下さい。糖尿病や肥満などの生活習慣病を予防する上で重要なことは、部分的な機能を期待して1つの栄養素に頼るのでは無く、普段の食生活を見直してバランス良く栄養素を摂取していくことが大切です。クロム以外では亜鉛とマンガンの2つのミネラルがインスリンに関わっています。亜鉛はインスリンの合成や貯蔵、分泌に作用して、マンガンはインスリンの合成に関わる栄養素です。インスリンを正常に働かせるためには、クロム、マンガン、亜鉛の3つを意識して摂る必要があります。
◎クロムの働きと役割その2・脂肪の代謝を促進
クロムは脂質の代謝を促して、血液中の中性脂肪や、コレステロールの量を下げる働きがあり、血中のコレステロール値を正常に保ちます。
血中のコレステロール値………HDLコレステロール(悪玉)が増えると、動脈硬化などの生活習慣病のリスクが高まります。
糖質、脂質の代謝を正常化させるクロムは、糖尿病や脂質異常症など、生活習慣病の予防には欠かせない栄養素です。
◎クロムの働きと役割・まとめ
クロムの主な効果:糖質・脂質の代謝、血糖値の正常化、コレステロール値の正常化、糖尿病予防、動脈硬化予防、肥満予防、インスリンの活性化

■クロムの性質・特徴 ~どんな栄養素?もう少し詳しく~
クロムを食事から摂取する場合の吸収率は低く、1%程度と考えられています。
クロムを含むセレンなどの微量ミネラルは、体内での必要量に比例して吸収率も低くなっています。人体では約2mg程存在しています。

ビタミンCと一緒に摂るとクロムの吸収率が上がります。
口から体内に取り込まれると小腸から吸収されて、トランスフェリンと呼ばれる糖たんぱく質と結合した状態で「あ~れ~」っと血液に流されながら、肝臓、腎臓、脾臓、骨など、全身へと送られます。


ビタミンB群の穴あきだらけの番号………B6からぶっ飛んで、次はB12とかいうアレのことですが、新発見のビタミンだと思われてたものが、後々になって実は既に発見済みのビタミンに何かしらの物質がくっついただけの、一見新しい形の栄養素に見えるんだけども、実は只の化合物だったという事情があって、あのような穴あき状態になっているのです。栄養学はビタミン、油、タンパク質、糖、その他、お互いくっつき合ってカオスな世界を作っています。





■クロムの過剰症と欠乏症 ~摂りすぎ、逆に不足するとどうなる?~
◎クロムの過剰症
クロムの吸収率は低く、過剰部摂取分は尿で排出されるため、過剰症になりにくい栄養素です。過去、アメリカでは、サプリメントによる大量摂取により過剰症が起きたという報告があり、一般的な食事からでは過剰症の心配はありませんが、サプリメントの大量摂取には注意が必要です。
サプリはあくまでも食事から摂取困難な栄養素の補給を目的とするもので、これは全ての栄養素に言えることですが、栄養素の摂取をサプリを中心として考えるのは危険な行為です。

◎クロムの欠乏症
栄養素として、体内での必要量はごく僅かです。野菜、肉、魚など幅広い食品に少しずつ含まれているため、一般的な食生活を送っていれば不足することはまずありません。
サプリのみに頼った食生活などでクロムが不足してしまうと、インスリンの働きが鈍くなり、糖質の代謝が上手く機能しなくなります。脂質の代謝機能も下がり、コレステロール値が上昇します。糖質、脂質の代謝が正常に働かなくなると糖尿病や動脈硬化など様々な生活習慣病のリスクが高くなります。
■クロムの効率の良い摂り方
クロムは幅広い食品に含まれているため、低い吸収率は問題にはならず、摂りすぎの心配もありません。とりわけ意識して摂取する必要が無い栄養素です。

ほうれん草などの野菜に含まれるシュウ酸、フェチン酸と一緒に摂取した場合、ただでさえ低いクロムの吸収率が更に下がってしまいます。アク抜き目的で下茹ですると、その効果は薄れるのですが、水溶性の栄養素………ビタミンなどが流出してしまうため、この手段は注意が必要です。
逆に、ビタミンCはクロムの吸収率を上げる働きがあります。

一応性質として紹介しましたが、クロムは過不足の起こりにくい栄養素です。吸収率の増減はそれ程気にしなくても良いかと思います………が、シュウ酸、フェチン酸は鉄分の吸収も阻害するため、この辺りの事情を含めて茹でるか茹でないかの決断をしてください。


吸収云々はどうでもいいので、クロムの持つ生活習慣病の予防効果を上げる手段としては、インスリンの合成をする酵素の材料となっている亜鉛とマンガンや、糖質・脂質の代謝に関わるビタミンB1、ビタミンB2などの栄養素と一緒に摂取するのがお勧めです。
■クロムを多く含む食品
クロムを多く含む食品としては、青海苔、昆布、ひじきなどの海藻類、大豆、小豆などの豆類、サバ、サンマ、アサリ、牡蠣などの魚介類、豚ロース、ほうれんそう、さつまいも、鶏レバー、唐辛子、シナモンなど様々な種類の幅広い食品に含まれています。