- 1 ■食物繊維とは?
- 2 ■食物繊維の性質
- 3 ■食物繊維の働きと効果・水溶性と不溶性の効果の違い
- 4 ■食物繊維は摂りすぎると害になります。不足してもダメ。
- 5 ■食物繊維の種類
- 6 ■食物繊維を多く含んだ食品
■食物繊維とは?
食物繊維は英語で:DietaryFiber(ダイエタリーファイバー)
まずはじめに、食物繊維は炭水化物に分類されます。
炭水化物は、糖質と食物繊維の総称です。

炭水化物は五大栄養素の1つです。
糖質は三大栄養素に属していますが、食物繊維は三大栄養素には属していません。

食物繊維は人の持つ消化酵素では消化できず、直接的にはエネルギー源になりません。タンパク質や、脂質や、ミネラル類などのように人体の構成成分になることもなく、一昔前は「消化できない=栄養にはならない」と考えられ、食物繊維は役に立たない食べカスという残念な評価でした。しかし現在ではその評価が見直されています。エネルギーにも組織の成分にもならない食物繊維ですが、健康に繋がる様々な働きや効果ががあることが判っており、食物繊維の中では特定保健用食品(トクホ)に認定されているものもあるくらいです。

■食物繊維の性質
食物繊維と糖質は違います。
違います………違うのですが………物質的なカテゴリとしては、食物繊維は多糖類に属しています。糖類とは言っても甘みはなく、甘味料としては全く使えません。
食物繊維と聞くと、賞味期限が切れた(ちょっと黄色い)さきイカの姿をイメージする方も多いのではないでしょうか?

それは不溶性の食物繊維で、言葉の通り繊維状の物質です。一方、水溶性の食物繊維は固形ではなく、ヌルッとしたジェル状の物質になります。
水溶性と不溶性では働きや性質が全く異なるため、違う栄養素として、用途を使い分けることが大切です。
食物繊維は基本的に消化できず、エネルギー源にはならない物質です。
しかし、例外的に考えるとカロリーはゼロではありません。
腸内細菌が食物繊維を分解する過程で、別の物質(メタンガス・短鎖脂肪酸・水素・二酸化炭素)を生成するのですが、この内の短鎖脂肪酸(酪酸・プロピオン酸など)がエネルギー源として吸収されるため、間接的にですが、食物繊維にはカロリーがあるとされています。
食物繊維がどれだけ分解され、どれだけのカロリーになるのか?………という数値は、人によって、日によって異なる腸内環境に左右されるため、基準などの数値を出すことは難しいようです。
食物繊維の大半は分解されずにそのまま排出されますので、エネルギー量はごく微量です。
■食物繊維の働きと効果・水溶性と不溶性の効果の違い
食物繊維は水溶性と不溶性の2つに分類されます。
それぞれ性質が異なり、働きも変わってくるため、水溶性と不溶性の特徴を知ることは、健康な食生活を送る上では重要なことです。
◎水溶性食物繊維の働きと効果その1・血中コレステロール値の上昇を抑える。
水溶性の食物繊維には、粘性や吸着性があり、胆汁酸やコレステロールを吸着して吸収を抑制する働きがあります。

小腸内で胆汁酸やコレステロールを吸着して、便として排出する働きは、動脈硬化や、脂質異常症………いわゆる肥満を予防する効果が期待できます。
◎水溶性食物繊維の働きと効果その2・消化の速度を緩やかにして血糖値の上昇を抑える。
水溶性の食物繊維には粘性があります。消化器官で水分を吸った水溶性食物繊維は膨張して、胃から十二指腸へ食物が移動する際の足枷となって移動速度を遅らせます。
その作用により、食後の血糖値上昇を緩やかにして、糖尿病などの生活習慣病を予防する働きがあります。
◎水溶性食物繊維の働きと効果その3・腸内細菌の餌になって腸内環境を整えます。
腸内細菌には大きく分けて悪玉菌、日和見菌、善玉菌の3種類が存在しています。
水溶性の食物繊維は、乳酸菌やビフィズス菌など、善玉菌の餌となって善玉菌の増殖を助けます。
悪玉菌は発ガン性物質などの有害物質を造り出して、腸や肝臓に負担を掛けたり、便秘の原因となるなど色々な悪さをしますが、善玉菌が増殖することで悪玉菌の増殖を抑えます。
ちょっと↑のほうで、食物繊維のカロリーはゼロではないですよ………という解説をしましたが、腸内細菌が食物繊維やオリゴ糖などを分解して短鎖脂肪酸を造り出します。ここで大事なのは、短鎖脂肪酸がエネルギーとなる………という話では無く、短鎖脂肪酸が腸内で増えると、腸内の環境が酸性に変わり、悪玉菌の増殖を抑える効果があるということです。善玉菌を増やすことは、自動的に悪玉菌を減らす事に繋がります。そのためにはまず食物繊維を摂取することが必要だということです。あと乳酸菌も。
悪玉菌を抑えるだけではなく、善玉菌自体にも良い効果があり、マクロファジーを刺激して、免疫機能を高めたり、消化吸収を促進させ、排便を促して便秘の予防・改善になったり、コレステロールを排出する働きなどもあります。
◎不溶性食物繊維の働きと効果その1・過食や肥満を防止
野菜や果実の皮などに多く含まれている不溶性食物繊維は、その名の通り繊維質なため、そのままだと呑みこみづらい性質があります。
必然的に咀嚼の時間が長くなり、食事時間も長くなります。
ゆっくり食事することで満腹中枢が働くため過食が防げます。
また、消化できない性質で胃の中に長時間留まるため、満腹感が持続して過食や肥満の防止に効果的です。
◎不溶性食物繊維の働きと効果その2・蠕動運動を促して便秘予防・改善
不溶性食物繊維は、消化されずに大腸まで運ばれると、腸を内部から刺激して蠕動運動を活発にさせます。便の排泄を促して便秘予防・改善の効果があります。
◎不溶性食物繊維の働きと効果その3・有害物質や老廃物の排出
水溶性の食物繊維には粘着性があるため、コレステロールなどの有害物質をくっつけて排出させるのですが、それに対して不溶性の食物繊維はカサが多いため、押し出すといった感じで有害物質を便として排出させる働きがあります。大腸の通過時間を短くする効果もあり、有害物質の吸収を抑制します。
◎不溶性食物繊維の働きと効果その4・腸内細菌の餌になって腸内環境を改善
水溶性の食物繊維と同じように、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌を増殖させるための餌となります。
ちなみに、水溶性のほうが不溶性よりも分解されやすいため、善玉菌を増やす効果としては水溶性
◎水溶性食物繊維・不溶性食物繊維の働きと効果・まとめ
▼水溶性食物繊維・不溶性食物繊維の主な働き
整腸効果、善玉菌を増やす、悪玉菌を減らす、便秘予防・改善、コレステロール値低下、ガン予防、血糖値の上昇を抑制、動脈硬化予防、肥満予防など
▼水溶性食物繊維・不溶性食物繊維の働きの違いは?
水溶性・不溶性ともに同じような効果に見えますが、それぞれの効果の強弱に違いがあります。
不溶性食物繊維は、満腹感を得るといった方向性で肥満予防となり、水溶性の場合は糖質や脂質などのエネルギー源の吸収を抑えるといった形で肥満予防の効果を発揮します。
便秘の改善を期待するなら不溶性の食物繊維を、血糖値の上昇やコレステロール値を抑えたいなら水溶性の食物繊維を摂ると効果的です。

■食物繊維は摂りすぎると害になります。不足してもダメ。
食物繊維は一度に摂りすぎると消化不良を起こして下痢や嘔吐の原因になります。
コレステロールや有害物質を体外へと排出する効果が、腸内で過剰に働いてしまい、ミネラル類などの必要な栄養素も一緒に排出してしまいます。
逆に食物繊維が不足するとどうなるのかといいますと………食物繊維の健康効果が得られなくなるため、便秘になる他、糖尿病や、心筋梗塞や、ガンなどの病気になるリスクが高くなります。
実際のところ、食物繊維の摂取量が少ない人は、病気の発症率や死亡率が高くなるという研究結果も出ています。

■食物繊維の種類
◎水溶性食物繊維の種類
▼ペクチン
コレステロールや胆汁酸などの有害物質を吸着して排出させる作用と、腸内の山玉菌の餌となり腸内環境を整える働きがあります。
リンゴや柑橘類の皮などに多く含まれており、未成熟の果実に含まれるペクチンは不溶性で、完熟すると水溶性に変化する性質があります。
▼グルコマンナン
コンニャクです。水溶性です。粘質で吸水すると嵩を増す性質があり、ダイエット食品としても有名です。


▼アガロース
寒天です。天草に多く含まれています。
◎不溶性食物繊維の種類
▼セルロース
食物繊維と言えばこれ、というくらい最も多く摂取されている栄養素です。
主に植物性食品に含まれており、植物の細胞壁を構成する成分でもあります。
食物のカサを増して満腹感を与えてくれるため、過食や肥満を防ぎます。ダイエットには効果的な栄養素です。
▼ヘセミロース
不溶性食物繊維の中でセルロースとペクチンを除いた種類をヘセミロースと呼びます。
一般的にはセミロースト同じ作用がありますが、米ぬか由来のヘセミロースから造られるアラビノキシラン誘導体?………とか何とかっていうワケのワカラン物質には、抗酸化作用や免疫賦活作用あると注目されています。
賦活とは………他の物質(作用)によって活力を与えられること。
▼βグルカン
グルコース(ブドウ糖)が結合して出来た不溶性食物繊維をまとめてβグルカンと呼びます。
パン酵母やキノコ類に多く含まれており、白血球を活性化させて免疫力をアップしたり、ガン細胞の発育を抑制するといった作用があります。
◎動物性食物繊維
▼キチン(キトサン)
エビやカニなどの甲殻類の殻に含まれている風変わりな不溶性の食物繊維で、キノコなんかにも含まれています。グルコサミンが結合してどうのこうので………脂質や有害物質が結合することで、化学的に肝臓の負担を和らげ、有害物質の吸収を阻害してくれます。
肥満を防ぐ作用や、整腸作用や、ガンの予防にもなる栄養素です。


▼コンドロイチン硫酸
ムコ多糖類の一種で、硫酸なんて名前からして一見危ないヤツにみえますが、実際のところ食物繊維界の社会不適合者です。食物繊維のクセに、何故か関節や軟骨に異様な興味を示し、軟骨の椎間板(ついかんばん)、間接のの滑液(かつえき)に含まれています。肌の保湿などのこうかもあり、コラーゲンに近い働きをする風変わりな食物繊維です。
納豆、山芋、オクラ、ウナギ、ナマコ、フカヒレ、鶏皮などの食品に多く含まれています。

■食物繊維を多く含んだ食品
◎不溶性の食物繊維を多く含んだ食品一覧
キャベツ、カボチャ、ブロッコリー、ごぼう、生姜、大根、タケノコ、つくし、とうもろこし、ニンニク、ネギ、ビーツ、ピーマン、ほうれん草、もやし、レンコン、ゴーヤ、りんご、レモン、柿、キウイ、ドリアン、ドラゴンフルーツ、ブルーベリー、ラズベリー、小豆、大豆、ひよこ豆、えんどう豆、緑豆、レンズ豆、インゲン豆、エビ、カニ、えのき、エリンギ、ぶなしめじ、椎茸、キクラゲ、なめこ、ひらたけ、舞茸、まつたけ、栗など
◎水溶性の食物繊維を多く含んだ食品一覧
コンニャク、寒天、昆布、ワカメ、ひじき、りんご、ココア、柑橘類、イチジク、梅、キウイ、プルーン、マンゴーなど
◎食物繊維の1日辺りの摂取目安量・お勧めの食材は豆
18~69歳の1日の摂取量(目安)は、
男性:20g以上、女性18g以上

キャベツ(生)換算で………男性は1日1.1kg、女性の場合は1日1kgのキャベツを食べると目安量に達します。
野菜から食物繊維を摂るには結構大変な量が必要ですが、手っ取り早く摂取出来るお勧めの食材は豆です。
野菜とは食物繊維の含硫量が一桁違うため、キャベツの場合1kg以上必要ですが、豆類の場合は、大体100gくらいで摂取可能です。
キノコ類にも食物繊維が多く含まれています。ザックリと野菜の倍くらいでしょうか………。