■リンとは?
何とか酸とか、なんちゃらニンとか、どうたらニウムなど、聞いただけでイラッとする名前の多いこの栄養素業界で、一番名前が覚えやすい癒やし系栄養素です。


農業では肥料として、リンという名前を良く耳にするかと思います。植物にも動物にも欠かせない栄養素です。
リンは16種ある必須ミネラルの一種で、多量ミネラルに属しています。農業にも人間の体にも欠かせない重要な栄養素です。
人体(ネアンデルタール人も含む)に含まれるミネラルランキングでは、カルシウムに次いで280万年連続第2位の座をキープし続けています。
体内に含まれるリンの量は体重の1%と言われています。

■リンの効果と働きと若干無駄な時間 ~うなじ、太股の裏側、こめかみ、へそ体中の至る所にリンの影が………~
◎リンの効果・働きその1 ~リンは何所に潜んでいるの?~
いきなりですが、右足を拝借。
右足の、人差し指と中指の間をちょっと開いてから虫眼鏡でご覧下さい。

次に、ヘソの下にちょっろッと毛が生えていますよね。ヘソの下がちょろッとしていない人は、ちょろッとしている人を探してから、その毛を虫眼鏡で遠慮なくご覧下さい。
続いて、膝の裏側、普段自分では絶対見ない場所の、若干シワになっている所も、はい、そう、ここで虫眼鏡。

そうです。それがリンです。汚れを発見した方は、ちゃんとお風呂に入りましょう。
リンは細胞の一部となって体中の全ての細胞に存在しています。



今は亡き小松君についてはコチラ↓
説明が面倒くさくて若干現実逃避していましたが、辛い現実に戻って解説を続けます。
リンは、タンパク質や脂質、糖質と結合して、リン脂質となり、核酸(DNAやRNA)や細胞膜を構成する成分となります。
細胞膜として、浸透圧(特定の物質のみを透過させるセキュリティ管理)の調整などの働きをします。また、リン酸塩(リンと酸素が結合)として、血液の酸とアルカリの調整(PH)も行います。
このように、リンは他の物質と結合し、細胞の一部となって全身の至る所に存在しています。
リンは、生命維持に欠かせない大事な栄養素です。
◎リンの効果・働きその2 ~エネルギーの貯蓄や代謝にもリンの仕事です~
まず、リンは、体内でエネルギーを生産する酵素(こうそ)の構成成分になります。
酵素について、詳細はこちら↓
◎ビタミン ~五大栄養素が一画、ビタミンという言葉に秘められた意味とは?~
また、三大栄養素(糖質、タンパク質、脂質)が体内に摂取されると、分解される過程で、ATP(アデノシン三リン酸)という化合物を造り出します。
ATPはアデノシンと3つのリン酸が結合した化合物で、一見解りにくい名前に見えますが、アデノシン+3つのリン酸で、アデノシン三リン酸です。
このATPが更に分解される時、エネルギーを生み出します。
つまり体内ではATPという形になって、エネルギーが貯蔵されているわけです。
三大栄養素はそのままの状態ではエネルギー源として利用できません、ATPに変化して初めてエネルギーとして活用できるようになります。つまり、三大栄養素をエネルギーとして使用するためにATPに作り変えると言う訳です。ATPは体中の各組織に運ばれて、分解される時に高いエネルギーを発生させます。三大栄養素をATPに変化させるという現象は、何時でも使用できる電池やバッテリー(エネルギー源)を作り出すという見方もあり、運搬可能な携帯エネルギーを生産して蓄えているとも言えるのです。
◎リンの効果・働きその3 ~骨や歯の材料になります~
リンは、カルシウム、マグネシウムと結合して、骨や歯の成分になります。
体内に存在するリンの内、85%が、骨や歯の成分になっています。
残りの15%が、上の方↑で説明した物質として体内で働いています。
リンはカルシウム、マグネシウムと並んで骨には欠かせない栄養素です。
リンの主な働きと効果:骨の材料、エネルギー代謝と貯蓄、核酸、細胞の構成成分、PHの調整、浸透圧の管理。
■リンの性質・特徴
◎吸収率の高いリンはとりすぎ注意なミネラルです。
リンはカルシウムと違い、吸収されやすい性質があります。(吸収率は成人で60~70%)
リンは摂り過ぎるとカルシウムや鉄の吸収を阻害してしまいます。
リンとカルシウムの量が同一になるのが望ましいのですが、日本人にとってカルシウムは、不足しやすいミネラルで、逆にリンは必要以上摂取してしまう傾向があります。
幅広い食品に含まれ、添加物として(リン酸塩、ピロリン酸、ポリリン酸、メタリン酸など)加工食品にも広く使用されているため、摂取量を減らすのが難しいミネラルです。
摂りすぎ注意なリンですが、多少摂りすぎる分には問題ありません。副甲状腺ホルモンの働きで、血中の濃度が調整され、余剰分は尿で排出されます。
腎臓に障害がある場合、治療の過程でリンを制限することがあります。これは、腎機能が低下してうまく尿によって排出できなくなるからです。病院で人工透析の患者さんが、隠れて肉食べているところを医者に見つかって脳天にカカト落としを喰らっている場面をよく見かけるかと思いますが、コレはそういった理由によるものです。

■リンの過剰症と欠乏症~リンを摂りすぎる、逆に不足するとどうなる?~
◎リンの過剰症
病気などにより、リンの血中濃度が低下した場合、神経障害が起こります。
リンを摂りすぎるとカルシウムの吸収を阻害してしまい(逆にカルシウムの摂りすぎはリンの吸収を阻害します)、骨密度が低下して骨や歯が脆くなります。
リンは、一日の摂取量が2.1gを超えると、血中の濃度が高まります。
血中のリンの濃度が高くなると、
副甲状腺機能が正常働かなくなり、血中のカルシウム濃度を増加させる副甲状腺ホルモンが過剰に分泌されてしまいます。
その結果、骨からカルシウムが血液中に溶け出してしまいます。
そしてそのまま尿と一緒にサヨナラ~というわけです。

◎リンの欠乏症
幅広い食品に含まれ、添加物として(リン酸塩、ピロリン酸、ポリリン酸など)加工食品にも広く使用されているため、欠乏することは殆どありません。
慢性的に不足した状態が続くと、骨や歯が脆くなります。
■リンの効率の良い摂り方(でもあまり摂らない方が………)
リンはタンパク質に含まれています。リン=タンパク質と考え、タンパク質を多く含む食品を摂るのが、そのままリンの摂取に繋がります。
………が、↑の方でも散々説明しましたが、リンは摂りすぎる兆候のあるミネラルで、その上吸収率が高いため、逆に取り過ぎないように注意する必要があります。
インスタント食品、清涼飲料水などにさり気なく含まれる添加物の摂りすぎには要注意です。
ちなみに、清涼飲料水などに含まれる酸味料は、500mlペットボトル一本中、80mgほどリンが含まれています。

■リンを多く含む食品
肉類では、豚レバー、鶏レバー、ササミ、ハムなど、
魚介類ではマアジ、シシャモ、ドジョウ、、ワカサギ、ウナギなど、
その他、大豆、チーズ、ヨーグルト、牛乳。食品添加物。
■もう一回、リンとは?
記事の冒頭で「一番名前が覚えやすい癒やし系栄養素」だと書きましたが、
リン酸、リン脂質、リン酸塩、リンタンパク質、コリン、リポ酸、リポタンパク質。
この中にリンを置くともう何が何やら………。
リンは一番シンプルな名前だけに、一番ややこしい名前でした。
この記事を書く前は、リンと聞いてポメラニアンの子犬を想像しましたが、すっかりリンに対する印象が変わりました。
今ではリンの後ろにインドガビアルの形をしたオーラが見えます。ちなみにアイキャッチ画像がインドガビアルです。
