■飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の違い

………といきなり愚痴から始まりましたが、魂の叫びなので大目に見てやって下さい。脂質と脂肪酸シリーズ第2弾です。このシリーズは、脂肪酸の性質や、善いところ悪いところをしっかり把握することで「健康体へまた一歩近づこうぜ」という押しつけがましい親切心を素にして作られております。
近年、リノール酸など、ちょっ~と話題になった栄養素や食材などを過度に高評価して寛大広告バリに誇張表現している粗雑なWEB記事が目立つことを懸念しております。みなぎる食品では、偏った情報を載せるのでは無く、善いところも悪いところも公平に見極めて偏りの無い記事にする事を心掛けております。それが………、それこそが………。

気を取り直して………前回、”脂質と脂肪酸その1”のお復習いですが、脂肪酸は、酸素と炭素と水素が結合して出来た物質です。
炭素同士が連結した車両のような物で、各炭素の車両に水素が2つ結合し、先頭車両には水素が1つ、最後尾にはカルボキシル基とかいう輩がくっついています。(頑張って図を作ったので前回の使い回しですが載せておきます。ちょっと小さめに………)

基本的には先頭と最後尾の車両を除いて、炭素には水素が2個結合しているのですが、たまに水素が1個だけ結合した車両があり、2個目の水素と結合しないで、炭素同士が二重に結合している箇所があります。個の箇所を二重結合と呼び、この二重結合がある脂肪酸を不飽和脂肪酸、二重結合が無い脂肪酸を飽和脂肪酸と呼びます。
飽和脂肪酸は直列に並んでおり、対して不飽和脂肪酸は二重結合になっているポイントでモニャッと折れ曲がっています。


飽和脂肪酸は常温では固体の状態を保っている物が多く、化学構造的には安定しており(飽和状態になってて変化しにくいから飽和脂肪酸)、酸素と結合しにくいため酸化する心配が低いという性質があります。
一方不飽和脂肪酸は、飽和脂肪酸とは逆に、常温では液体の状態が多く、化学的には不安定で酸化しやすい性質を持っています。
■不飽和脂肪酸の種類と性質(特徴)
◎不飽和脂肪酸の性質
ほんの少し上↑の方で、不飽和脂肪酸は酸化しやすいと説明しましたが、折れ曲がった二重結合の部分に酸素が入り込むため、酸素と結合しやすい構造となっています。
不飽和脂肪酸の中には二重結合が複数箇所存在しているものも有り、二重結合が多ければ多い程酸素が入り込み易くなり、その分酸化のリスクも高まります。
二重結合の数が増えると融点が低くなるため、不飽和脂肪酸の全ては、常温では液体の状態となっています。
◎一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸
不飽和脂肪酸は大きく分けて2つに分類されます。
いきなり話が逸れてしまいますが、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸どちらも炭素連結の長さ(炭素の数)によって短鎖脂肪酸、中鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸に分類されるのですが、コイツを絡めて話を進めると、解説の難易度が跳ね上がってしまうため、ここはガン無視の方向で話を進めていきたいと思います。炭素数が16のパルミチン酸は、長鎖脂肪酸に属しており、同時に飽和脂肪酸にも属しています。炭素数18のリノール酸も長鎖脂肪酸に該当する脂肪酸ですが、不飽和脂肪酸に属するため、同じ長鎖脂肪酸であっても飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸といった違いがあります。長さの違いによる性質の違いは前回の記事で中鎖脂肪酸は優秀ですよ的な内容でコッテリと解説済みなので………。

改めまして、不飽和脂肪酸の種類ですが、二重結合が1箇所だけ存在するものを一価不飽和脂肪酸と呼びます。また、二重構造が2箇所以上存在するものを多価不飽和脂肪酸と呼びます。
◎一価不飽和脂肪酸
一価不飽和脂肪酸は一箇所にだけ二重結合が存在しています。
9番目の炭素車両に1箇所だけ二重結合が見られる脂肪酸をn-9系(別名:オメガ9)と呼び、一価不飽和脂肪酸の全てはこのオメガ9に該当します。
オメガ9は体内で合成可能な脂肪酸で、植物性の油に多く含まれています。かと言って、動物性油には全く含まれていない………ということも無く、牛脂や豚脂にも含まれています。
飽和脂肪酸には劣りますが、他の不飽和脂肪酸と比べると酸化しにくいという性質が有り、体内でも酸化しにくく、ガンの原因になる過酸化脂質になりにくいという特徴があります。熱にも強く、不飽和脂肪酸の中では調理や保存によって劣化が起こりにくく、長期保存に向いている脂肪酸です。
善玉コレステロール(HDL)を減らさず、悪玉コレステロール(LDL)を減らす作用があります。動脈硬化や心疾患の原因となるLDLを減らすことでこられを予防する働きがあります。血管壁のLDLコレステロールを除去する効果がありますが、これについての詳細は↓のオメガ3で解説します。
脂肪酸の名前 | 炭素数 | 二重結合数 | 融点(℃) | 主な食品 |
オレイン酸 | 18 | 1 | 14 | オリーブ油、紅花油、ひまわり油、椿油、牛脂、豚脂、アーモンド、ピーナッツ |

◎多価不飽和脂肪酸
二重結合が1箇所だけ存在する一価不飽和脂肪酸に対して、二重結合が2箇所以上存在する不飽和脂肪酸を多価不飽和脂肪酸と呼びます。最近よく耳にするかと思いますが、有名な物ではn-3系(別名:オメガ3)やn-6系(別名:オメガ6)などがあります。
多価不飽和脂肪酸の中でもDHA(ドコサヘキサエン酸)など多いものでは、6箇所の二重結合を持つ強者(つわもの)なども存在しています。
炭素列車の最後尾には−COOHといった構造になっており、この部分をカルボキシル基と呼びます。逆の先頭車両に当たる部分は水素が1個くっついており、この部分をメチル基と呼びます。
↑のn-9系(別名:オメガ9)では省略しましたが、構造的な違いをここでまとめて説明します。メチル基から数えて、3番目に二重結合が始まる不飽和脂肪酸がn-3系(別名:オメガ3)と呼ばれ、6番目がn-6系(別名:オメガ6)となり、最後に9番目がn-9系(別名:オメガ9)になります。
不飽和脂肪酸は何番目の車両から二重結合が始まっているのかによってグループに分かれます。(性質が変わります。)3と6が多価で9だけが一価です。
オメガ9は体内で合成可能ですが、オメガ3とオメガ6は体内で合成が出来ないため必須脂肪酸と呼びます。
飽和、不飽和と、これで全ての種類の脂肪酸が出揃いました。(カテゴリ的な意味で………)脂肪酸は種類によって枝分かれがゴチャゴチャしているため、此処(ここ)いらで一度、脂肪酸の家系図をまとめておきます。
脂肪酸 | 短鎖脂肪酸 中鎖脂肪酸(※2) 長鎖脂肪酸 |
飽和脂肪酸(※1) | ||
不飽和脂肪酸(※1) | 一価不飽和脂肪酸 | n-9系(別名:オメガ9)(※3) | ||
多価不飽和脂肪酸 | n-3系(別名:オメガ3)(※4) | |||
n-6系(別名:オメガ6)(※4) |
※1二重結合の有無によって分類
※2炭素数の数(連結の長さ)によって分類
※3二重結合の数、1か一価、2以上が多価)
※4二重結合の開始位置によって更に分類
◎n-3系(別名:オメガ3)の性質と特徴
▼細胞膜とリン脂質とコレステロールとオメガ3
体に良いと言われているオメガ3ですが、何がどう体に良いのか?そこんところを詳しく解説していきいます。
オメガ3は体内では合成できない性質があり、食事で摂取する必要があることから、必須脂肪酸と呼ばれています。
脂質は血管や血液と深い関係がある栄養素です。摂りすぎれば血液がドロドロになったり、時には血管をぶっ壊したりと悪い方向に作用しますが、適量を摂っていれば逆に血管を保護したり血液サラサラ効果も期待できます。オメガ3も血管に深く関わっている脂肪酸です。
脂質の働きの一つとして、リン脂質やコレステロールは、全身に存在する細胞膜(細胞1つ1つを包んで保護する壁)の構成成分となっているのですが、血管も細胞が集まって出来ています。ハンバーグを例に挙げてみると、まず挽肉がリン脂質で細胞膜の主成分となります。次にパン粉や卵がコレステロールでこれは繋ぎや補強の役目を果たしています。規則正しく並んでいるリン脂質の隙間にコレステロールが入り込んでいるといったイメージです。




血液が流れる事で血管には常に、水圧という意味での血圧という負荷が掛かっており、運動や興奮状態など、状況によっては血圧が更に上昇して、その分血管に掛かる負荷も増大します。血液は常に流れていますので、縦と横の両方に荷重が発生します。”負荷が増大しました→血管が破裂しました”となってしまっては困りますので、血管にはこの圧力に耐えられるような丈夫さと、しなやかさが求められます。
少し話しが変わりますが、空手家が木製バットを蹴り折るというパフォーマンスを披露したりしますが、この芸当を可能にしている要員としては、バットは固く衝撃を逃がすことが出来ず、更に棒状であるため横からの荷重には弱いことが挙げられます。バットを垂直に立てて横から蹴り折る事は可能ですが、バットを水平にして先っちょを蹴ったとしても、バットを粉砕したり、割けるチーズのように縦方向に割ることなど不可能です。

同じように、バットのように真っ直ぐな直鎖構造をしているリン脂質とそれを補強するコレステロールで構成された細胞膜は、真上から(縦方向)の荷重には強い反面、横方向からの荷重には弱いといった性質が見られます。コレステロールは固いという性質もあり、細胞壁を頑丈な構造にするという働きがあるのですが、固いということは逆に言えばしなやかさがありません。
そんなしなやかさに欠ける細胞膜をしなやかにする物質がオメガ3なのです。
▼オメガ3の働きその1・血管をしなやかにします。
オメガ3もコレステロールと同様に、リン脂質の隙間に入り込んで細胞膜の一部となります。二重結合を複数持つ多価不飽和脂肪酸に属するオメガ3は、複数箇所で折れ曲がっています。曲がっているということは、真っ直ぐな構造の物質と比較すると、横からの荷重に強いという性質が有り、オメガ3が細胞膜の構成成分となる事で、リン脂質とコレステロールだけでは補いきれないしなやかさを生み出して、バネのように作用することで物理的に横からの加重に強くなるということです。

他のオメガ野郎と比較してみても、オメガ3の二重結合数は多く、折れ曲がり具合が良く判ります。オメガ9のオレイン酸はたった1箇所で、オメガ6所属のリノール酸でも精々2箇所ですが、それに対してオメガ3の魚野郎ことDHAはナント6箇所も折れ曲がっています。

よく「真っ直ぐ生きろ」という台詞がありますが、3の様にヘシ折れることで他人様の役に立っている奴等もいる訳ですから、真っ直ぐであることだけが正しいとは限りません。

▼オメガ3の働きその2・血管壁の掃除屋、血管壁のLDLコレステロールを除去
オメガ3の働きは血管の補強だけでは無く、血管壁にへばりついたLDLコレステロール(悪玉)を取り除く働きもあります。この働きも結構物理的な感じでして………良い感じで折れ曲がっているオメガ3ですが、まず血液の流れによって加速します。血管壁にへばりついて色々と悪さをしているLDLコレステロール(悪玉)に体当たりしてLDLコレステロールを引っぺがし、LDLコレステロールと入れ替わる形でそのままその場に居座ります。(長居はしません)この現象を客観的に見ると、血管壁にへばりついていたLEDコレステロールが、オメガ3に置換されたという事になります。オメガ3の折れ曲がった構造はLDLコレステロールをガリッと削り取るには大変都合の良い形をしているという事です。
川に放流された腰の曲がったジジババが、流れに翻弄されながらも川壁についている喪を頭部や足で削り取るといったイメージです。例え入れ歯が外れようとも、老眼鏡が流されようとも、曲がった形をしていれば大した問題では無いという事です。

このようなオメガ3の置換効果は、血管壁を掃除することに繋がります。LDLコレステロールは油です。一度血管壁にへばりつくと血液の流れだけではなかなか取れません。これを放置すると油の層となり動脈硬化や心疾患の原因となります。オメガ3が自然には取れにくいLDLコレステロールを引き剥がし、代わりに血管壁にへばりつく訳ですが、これには複数のメリットがあります。血管壁から酸素や栄養素が取り込まれ(吸収され)るのですが、LDLコレステロールがへばりついていると油の層が邪魔をして吸収が阻害されます。
オメガ3は折れ曲がっている構造上、血管壁にくっついていても隙間ができて栄養素などの吸収を阻害しにくいといった特徴を持っています。
更に、1度血管壁にくっついたとしても剥がれやすいため、長くその場に居座らず血液に流されて自然に剥がれていきます。
LDLコレステロールはベチョッと血管壁にくっつき、オメガ3はピチョッとくっつくといったイメージです。血管壁には何もくっついていない状態が理想ですが、LDLコレステロールがへばりつくといった最悪の事態をオメガ3が解消して、オメガ3自身も直ぐに血管壁から離れることで、血管が詰まらないように血管壁の掃除をしているということになります。
▼オメガ3の働きその3・アレルギー反応・炎症の抑制、免疫力の向上
EPA、DHA、αリノレン酸などのオメガ3脂肪酸には、アレルギー反応や炎症を抑制する働きがあります。
後ほど↓「飽和飽和脂肪酸:不飽和脂肪酸(オメガ3:オメガ6)のバランスが大事」で詳しく解説しますが、アトピー性皮膚炎や花粉症の症状を抑える効果があります。

▼オメガ3は熱に弱く、壊れやすい。保存や調理の注意点は?
血管で大活躍………そんなオメガ3にも熱に弱いといった弱点があります。折れ曲がっている箇所が多くその点が良い感じに働くオメガ3ですが、この部分は壊れやすいという特徴があり、折れ曲がった部分は強度は弱く、そこが弱点となります。
更にこの部分は酸素と結合しやすく、酸化の原因ともなります。折れ曲がった箇所………二重結合が多いということは、オメガ3の最大の特徴でもあり、利点でも欠点でもあるということです。
気を付けるべきポイントは………。
例えばオメガ3の一種であるα-リノレン酸を多く含んだエゴマ油や亜麻仁油(アマニ油)の場合、100℃以上になるような高温調理は避け、酸化を避けるため開封後は2ヶ月以内に消費するように心掛けて下さい。ドレッシングやマリネなど常温で食べられるような調理に向いています。因みにエゴマ油やアマニ油も小瓶など小さな器で売られている理由は、早めに使い切ることを前提としているからです。
▼オメガ3に属する脂肪酸一覧と主な食品
脂肪酸の名前 | 炭素数 | 二重結合数 | 融点(℃) | 主な食品 |
α-リノレン酸 | 18 | 3 | -11 | エゴマ油、アマニ油、しそ油 |
EPA(エイコサペンタエン酸)(※1) | 20 | 5 | -54 | きんき、真鰯、ハマチ、うなぎ、真鯖 |
DHA(ドコサヘキサエン酸 | 22 | 6 | -78 | アンコウ、いか、ブリ、サバ、うなぎ、マグロ、さんま |
※1別名:IPA(イコサペンタエン酸)とも呼びます。
◎n-6系(別名:オメガ6)の性質と特徴
オメガ6はオメガ3と同様で、体内では合成できません。オメガ3とオメガ6は必須脂肪酸です。
有名なオメガ6の脂肪酸では、菜種油、ごま油、大豆油、コーン油、紅花油など、殆どの植物性の油に含まれるリノール酸がn-6系(別名:オメガ6)に該当します。
他にも、ちょっと聞き慣れないγ-リノレン酸(別名:ビタミンF※でもビタミンじゃ無いのよ)は、こちらも更に聞き慣れないカシス種子油や、月見草油などに含まれています。あと母乳にも………。

血中コレステロール値を下げる働きがあります。摂りすぎるとHDLコレステロール(善玉)も減らしてしまいます。
▼オメガ6に属する脂肪酸一覧と主な食品
脂肪酸の名前 | 炭素数 | 二重結合数 | 融点(℃) | 主な食品 |
γ-リノレン酸 | 18 | 3 | -11 | カシス種子油、月見草油、母乳 |
リノール酸 | 18 | 2 | -5 | 菜種油、ごま油、大豆油、コーン油、紅花油 |
アラキドン酸 | 20 | 4 | -49 | レバー、卵白、アワビ、サザエ、伊勢エビ、ひじき、ワカメ |
■オメガ3、オメガ6、オメガ9の働きと効果・まとめ
オメガ3、6が多価不飽和脂肪酸、オメガ9が一価不飽和脂肪酸、全部まとめて不飽和脂肪酸となる訳ですが、分子構造の特徴としては二重結合があり、その部分が折れ曲がっているということです。この折れ曲がっている構造がLDLコレステロールを除去して血管壁を綺麗にする効果がります。全ての不飽和脂肪酸は折れ曲がっているためLDLコレステロール置換効果が期待できるのですが、同じ不飽和脂肪酸であっても効果にも大小があり、二重結合が多い順に(効果大)オメガ3>オメガ6>オメガ9(効果小)―――となります。
オメガ3が細胞壁のしなやかさを生み出すと↑の方で解説しましたが、オメガ9にはこの働きはありません。オメガ9がオメガ3に劣っているかというと、決してそうではありません。オメガ3は壊れやすいという性質がありますが、オメガ9は壊れにくく、長期保存に向いています。どちらも一長一短があるためケースバイケースで使い分けることが大事です。
■必須脂肪酸とは
必須脂肪酸という言葉が↑の解説ちょくちょく出てきましたが、一言で説明すると必須アミノ酸、必須ミネラルと同じく、体内では合成できない体にとって重要な脂肪酸という意味になります。
脂肪酸の中で該当する物は、オメガ3とオメガ6になります。具体的にはオメガ6のリノール酸、アラキドン酸、オメガ3のα-リノレン酸です。

ビタミンの定義の一つに「体内では造り出せない有機化合物」という一文が存在するのですが、13種類の中の8種類のビタミンが腸内細菌によって合成されるということが判っています。ビタミンB群を中心に、B2、B6、B12、葉酸、ビオチン、ナイアシン、パントテン酸、最後にB群に属していない仲間はずれのビタミンK。一見矛盾に見えますが、「必要量を体内では造り出せない有機化合物」と言い換えれば間違いではありません。要するにビタミンも脂肪酸も適量を摂取することが大事ということです。
ちなみに、栄養素を造り出すことを合成と呼びますが、元素をくっつけたり離したりして分子構造を変えることで物質の性質を変化しているからです。ミネラルは元素、ビタミンは有機化合物(いくつかの元素がくっついて出来ています)なので、16種類の必須ミネラルの一種であるイオウがビタミンB1やビオチンの材料となったり、同じ必須ミネラルのコバルトがビタミンB12の材料となる理由として、ミネラルとビタミンの大きさを考えると納得できることです。
■飽和飽和脂肪酸:不飽和脂肪酸(オメガ3:オメガ6)のバランスが大事
◎脂肪酸はバランスが大事
「オメガ3は健康的だ」「オメガ3を摂りましょう」とよく耳にします。しかしこれだけでは情報不足だと言えます。
本当に大事なのは脂肪酸のバランスです。
飽和脂肪酸3:多価不飽和脂肪酸4:一価不飽和脂肪酸3
最近ではこの3:4:4の比率で摂取すると良いとされています。
次に重要なのは必須脂肪酸の摂取バランスです。
現代の日本人はオメガ3よりもオメガ6が過剰摂取状態の傾向が見られます。
普段口にする身近な食用油にはオメガ6が多く含まれているため、自然とその様な状態となってしまいます。端的に考えれば一般的な環境自体がオメガ6の過剰に繋がっていると言えます。
かの有名なリノール酸もオメガ6です。リノール酸は体に良いというイメージが定着しているのですが、それは間違ったイメージです。結論から言いますとリノール酸は良くも悪くも無い………この考え方が正解です。摂り方次第では状況によって善くも悪くもなるということです。
オメガ3とオメガ6のバランスが大事という話しに戻ります。両者のバランスが崩れるとプロスタグランジンという物質の生産に悪影響を及ぼします。
プロスタグランジンとは整体調整ホルモンで、血管の拡張・収縮、血液の凝固・融解、炎症・アレルギー反応の抑制などの生理的な生体活動に関与しています。
何故必須脂肪酸のバランスが大事かというと、このプロスグランジンは必須脂肪酸が原料となって造られているからです。
一言でプロスタグランジンと言ってもE1、E2、E3と三つの種類があります。
まずは、E1とE3ですが、アレルギー反応や炎症の抑制、血管の拡張、血液を融解する働きがあります。
次にE2には、アレルギー反応をアレルギー反応や炎症の促進、血管の収縮、血液の凝固といった、E1+E3とは真逆の働きをします。
オメガ6のリノール酸が体内でジ・ホモ・γリノレン酸に変換されE1の原料となります。E2の場合は、ジ・ホモ・γリノレン酸が更に変化してアラキドン酸になり、アラキドン酸から作られています。E3の場合はオメガ3のα-リノレン酸から変化したEPA(エイコサペンタエン酸)から作られています。
リノール酸(オメガ6)→ジ・ホモ・γリノレン酸→E1
リノール酸(オメガ6)→ジ・ホモ・γリノレン酸→アラキドン酸→E2
α-リノレン酸(オメガ3)→EPA→E3
現代日本人の食生活ではオメガ6が過剰気味になっていると見られています。オメガ6が過剰となると、プロスグランジン(E1、E2、E3)の原料となる物質が偏ってしまい生理機能の調節が正常に働かなくなり、生理機能自体のバランスが崩れてしまいます。
ブレーキ役であるE3が、増えすぎたE2を抑えることが出来なくなりその結果、アレルギー反応や炎症が過剰となり、血管が収縮しやすく、血液も凝固しやすい状態となります。この状態では血栓ができやすくなり、血流も悪くなります。動脈硬化や心筋梗塞のリスクが高くなるため、ブレーキ役のE3が正常に働くような環境………具体的にはオメガ3が不足していない状況が必要ということになります。
逆にオメガ3が過剰になると、血流が善くなりますが、血液が凝固しにくくなり、怪我などによる失血のリスクもあります。
オメガ3、オメガ6、どちらが悪か?どちらが善か………?その答えは、どちらが不足しても過剰になっても駄目だということです。だから、バランスがとても大事なのです。

◎オメガ3とオメガ6の適切な摂取バランスは?
では、気になるオメガ3とオメガ6をどんな比率で摂取したら良いのでしょうか?
まだまだ研究段階のため詳しいことは判明していません。
目安としては………1:4です。(1:2という説もあります。)
オメガ3(1):オメガ6(4)になります。
この油は良い油、この油は悪い油………といった考えで、急かん一般に良い油ともてはやされている油だけを摂取し続けるのでは無く、脂肪酸の性質や働きを把握して、その作用をコントロールしてやることが健康への近道だということです。

※イメージしやすいように脂肪酸の分子構造で、炭素連結の1つを炭素車両と呼んでいますが、そんな単語は存在しません。みなぎる足品だけの造語です。